【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
あっ…と反応する間もないまま、目の前が真っ暗になる。
そのまま何処かに引っ張られて、近くでドアの開く音がした。
突然の出来事に対応できなくて、思うように体が動かせない。
足がもつれるのも相手は気にしてないみたいで、そのまま引きづられると、またすぐ側で今度はドアの閉まる音が聞こえた。
埃っぽい匂い。
どこかの空き教室……?
目元を覆うものは温かくて、これは人の体温。
触れてみると、覚えのあるしなやかな指先に当たった。
その形を確かめるようになぞると、ぴくりと反応を示して硬くなった指先。
動作に躊躇いを感じたのは、本当にこの一瞬だけで。
次の瞬間には体が大きく揺れて、ひんやりとした感覚が背中いっぱいに広がっていた。
床に倒された事実。
ようやく脳全体に信号が行き渡ったところで、鼻を摘まれて塞がれた。