【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。



本能的に酸素を求めて口を開く。


それは、唐突な行動の意味を考えるよりも速かった。


と、ぬめりと濡れたものが唇の隙間を割って入ってきて、唇を塞がれる。


息が詰まって、どうにも声が出せなくなる。



ああ、この人は……ただ、キスがしたかったから。


それなら私は、受け入れる。


だけど今日のは、いつもの焦らすようなキスとは違う、荒々しいもの。


やっぱり、さっきのを見られてた…?



誤魔化し方を知らない私は、この状況に危惧する。


何をされるのかと、視覚を塞がれて倍増する恐怖。


そして、早くも違和感に気が付いた。




「……んん…っ?」



てっきり、私の口を開けさせるための行動だと思ったのに。


呼吸器孔はいつまでも解放されなくて、一瞬吸い込みかけた空気を肺に送ることができない。


鼻と口の両方を塞がれて……



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