【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。


つまり、私は息ができなくなっていた。



どうして、何で……?


苦しい。やめて。


言葉にならない訴えは、心の内で放たれて消えていく。


酸欠が近付いているのか、空気を送り込めない胸の奥から熱いものが込み上げる。



「んん、んーっ……んんんーっ」


頑張って頑張って声を出そうとするけど漏れるのは、か細く小さな呻き声。


もう、口内を蠢めく生温かい異物を追い出す余裕さえない。



頭を振って抵抗した。


塞がれた手を外そうともがく。


躍起になって爪を強く強く立てる事になっても、尋常じゃない力で押さえ付けられて、外れない。



どうしよう、本当にまずい…。


何を考えているかも分からなくて、意識が朦朧としかけたところで一瞬解放されて、一気に空気が流れ込んでくる。


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