【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
裏腹に、見上げた瞳は狂気的。
口元に歪んだ笑みを浮かべるその顔は、全く知らない人のよう。
歯が噛み合ってかちかち音を立てる。
体が震えて、どうしようもなく身が縮こまる。
本当に、本当に……殺されるかと、思ってしまった。
「ヒメ」
綺麗な弧を描いた唇から発せられる声音に、びくりと肩が揺れる。
驚くほど落ち着いた……
それこそ、何もなかったように振る舞う普段通りの所行に、言葉が出なかった。
まさか。この状況下で信じられない神経をしている。
この人は、狂ってる……。
「もう、僕から離れないで」
今さら再確認した私に降りかかる、穏やかな声とは裏腹の、残酷かつ辛辣な言葉。
一見して、離れるのが耐えられなくて恋しがる恋人の台詞にも似ているけど。
この人の、本心は……