【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。



私は今日、初めてこの人から、逃げたくなった。


それこそ、見つからないと安心できる所まで、全力で。


もう、向き合いたくないって思ったの。


何でだろう、って考えても分からないから、考える事さえ止めた。


もう、いいや……って、諦めた。



ただただ、喫驚して目を限界まで見開いた純くん。


何がそんなに彼を驚かせているのか、私には理解できないし、したくない。


そっとその腕から逃れ出て、一歩一歩と後退りする。


だけどそんな私にはまるで見向きもしない。


覚束ないまま、もやもやとした思いを抱えながら抜け出した。


私ももう、振り向けない。



乱れた心のまま何かをしようとする意欲すら湧いてこなくて、気付けば靴を履いて学校を抜け出してた。


どこでもいいから遠いところへ行きたかった。


ふらふらとした足取りは重々しい。


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