桃の花
少年Asaid
「「「うおっしゃぁーーーーーー!!!」」」
急に響く喉太い声の塊で目が覚める。
「花房、美琴です。よろしくお願いします。」
軽くお辞儀をする彼女…。
何処かで見た気がする。
「おい、俊、俊‼︎」
「ん、なんだ?」
隣の席ではしゃいでいる健太。
いつも騒がしいのにいつも以上に騒がしい…。
「なんだじゃねぇーよ!あの子ちょー可愛くね⁇」
俺は健太の指す方を見た。
長いツヤのある黒髪と陶器のような白い肌、整った顔立ちにモデルのようなプロポーション。
少し長い紺色の制服のスカートも軽く着こなして見せて、なかなかいない〝美女〟だった。
だけど、何か胸の奥に引っかかる。
「俺、あの子とあった気がする…。」
そんな気がした。
「あんな美女に会ったならお前が忘れるわけないだろ。」
「けどなぁ〜、あった気がするんだよ…。」
何処だっけ、何処だっけ……。
ふと思考が止まり、その次の瞬間彼女と目が合った。
教室全体が無音になったみたいに静かになった。
彼女と俺しかいない二人の世界みたいに。
そう言えば、今日の朝も同じ気持ちになったよーな……。
(あっ……!!!)
「あああぁぁーーーー!!!?」
ーーそうだ、思い出した。
俺が今日の朝助けた女の子だ。