本当はずっと、好きだった。
「…ん、帰ってきたか。」
「すごい、よく分かったね。」
寝ている要を起こさないように
静かに座ったつもりなのに
要はゆっくり目を開けて
目の前の私を見る。
「匂いで分かるよ。」
「え、匂い?」
「あぁ。
…お前いっつもミカンみてーな香りする。」
そう言う要に目を丸くしながらも
私はすぐに笑った。
柑橘系の匂いは
確かに使ってる洗剤に含まれてる。
けどそれをすぐに感知するなんて
要、犬みたい。
「嗅覚鋭いね。」
「だろ。昔から犬並み。」
「あ、自覚あるんだ?」
そんなことを話しながら
クスクス笑っていると
不意に
要が笑みを消して
私に尋ねてくる。
「…で?あいつ、何だって?」
「…あ……うん、ダメだった。」
そう尋ねられて
私は一瞬どきっとしたけど、
いつものように笑ってそう返した。