本当はずっと、好きだった。





「…沙織?どうしたの?」

「……沙織…?
ちょ、どうしたの…って、あんた泣いて…っ?!」

「あ…あれ??」






心配する沙奈と

私の顔を覗き込んだ歩美が
慌てていて。




私は笑いながら
大丈夫大丈夫!と2人に言う。






「ごめん、目にゴミ入って目が痛くて!
涙出ても出てこなさそうだから
ちょっとそこで洗ってくるね!」





私は2人に笑いながらそう言うと

心配する2人を置いて
教室を出て行った。






------何で?どうして?






自分でもわからないこの気持ちに

私はそう心で呟きながら
廊下の水道まで走る。







-------ドンッ!








「………!」







その途中

誰かとぶつかって、足が止まる。





涙で目の前はぼやけてはいたけど

ぶつかった時にした
香りに、私は息を飲んだ。






------この香り、要だ。






私はそう確信したと同時に

その体をよけて
また走り出した。







「っ、おい沙織…!」







後ろから聞こえた

懐かしい声を無視して。








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