本当はずっと、好きだった。
「家族で毎年行ってるから、
それには行けないんだって。」
そう言って
無理に笑顔を作る沙織。
俺はそれを見て、心が痛々しかった。
それと同時に
人を殴り飛ばしたいほどの
怒りを感じた。
(…そんな嘘つく位なら
いっそこいつのこと振ってやれよ…!)
変に希望を持たせながらも
絶対に夢さえ見させない
あの男に、残酷さを感じながら
俺は必死に気持ちを抑えた。
「………へぇ。」
そう短く返事をして
俺は沙織から視線を逸らした。
…聞いてるこっちが、辛かったから。
(---------何でだよっ…!何で…)
こいつは、こんなにお前を思ってるのに
「でも久しぶりに直接話せたから!
それだけで十分!」
こんなにも
健気にお前を待ってるのに------
「……あっそ。」
何でお前は
こいつを見てやらないんだよ-----。
俺は
そう言いながらも切なそうな笑顔で
ふと下を向くこいつを見て
余計に胸が締め付けられた。
(…っ……俺だったら…)
こいつを、こんな顔にさせないのに。
そう思いながらも
そんなことを悟られないよう
俺はすぐに視線を逸らした。