本当はずっと、好きだった。





すると不意に

沙織がこっちを向いて






「要ありがとう、ここに連れてきてくれて。」






そう言って笑顔を、俺に向けた。





(--------っ。)







それを見た途端に

また鼓動が可笑しなほどに
激しく動き出して。




それと同時に



あいつ越しに見える

あの男の影が
俺の胸を締め付けた。





(………あぁ、本当に…)






報われない-----。




そんなことを思いながら

俺はほぼ無意識に
こいつの名前を呼んでいた。






「……沙織。」






そして
無意識にまた、口を動かす俺の体。






…報われないのは分かってる。



でも苦しかった。



こいつを想う自分も、

振り向いてくれない相手を想うこいつも、




…何もかも一方通行のこじれたこの関係が。







「……俺さ…」






でもきっと

これを言った時に





俺らの関係も 終わる気がしていた。







---なのに








「……俺さ…お前のこと好きなんだよ。」








言わずには

いられなかった。








< 46 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop