本当はずっと、好きだった。
すると不意に
沙織がこっちを向いて
「要ありがとう、ここに連れてきてくれて。」
そう言って笑顔を、俺に向けた。
(--------っ。)
それを見た途端に
また鼓動が可笑しなほどに
激しく動き出して。
それと同時に
あいつ越しに見える
あの男の影が
俺の胸を締め付けた。
(………あぁ、本当に…)
報われない-----。
そんなことを思いながら
俺はほぼ無意識に
こいつの名前を呼んでいた。
「……沙織。」
そして
無意識にまた、口を動かす俺の体。
…報われないのは分かってる。
でも苦しかった。
こいつを想う自分も、
振り向いてくれない相手を想うこいつも、
…何もかも一方通行のこじれたこの関係が。
「……俺さ…」
でもきっと
これを言った時に
俺らの関係も 終わる気がしていた。
---なのに
「……俺さ…お前のこと好きなんだよ。」
言わずには
いられなかった。