本当はずっと、好きだった。




そう思っていたのに


---突然その時はやってきた。







------ドンッ!







いきなり真っ正面からぶつかってきた
女子を、思わず受け止めれば


不意に、知っている香りがした。






-----柑橘類の香り。






(……え…。)






まさかと思って下を向けば







「---------っ!」

「………!」






案の定、沙織だった。


でもその一瞬見えたのは
泣いてる、あいつの顔。




濡れた目でハッとして

それから俺を避けるように
走り去って行く。







「っ、おい沙織…!」








声を掛けるも、それを無視して
階段を降りていってしまう沙織。



…これがあいつの答えだろ。




そう思って
諦めろと言う自分がいるのに







(………っ、やっぱり無理だ…。)






俺はそのまま
仲間を残して走って追いかけてしまった。







(……泣いてた…。)







あいつが、泣いてた。




きっとまたあのダメ彼氏に
泣かされたんだろうと

そう思うと放っておけなくて



俺はそのままあいつを追いかけた。








(……やっぱり、俺は…)







あいつに笑ってて欲しい、

泣いて欲しくない。







やっぱり俺は





俺が好きなのは


避けられようが何しようが
-----沙織なんだ。







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