本当はずっと、好きだった。





「春樹くん!」

「え?………あぁ、沙織。」







春樹くんは私の声を聞いて
少ししてからこちらに向かってきた。



春樹くんの周りにいた男女が

一斉にこっちを見てくる。








「…どうしたの?何か用?」








そしてドアのところまで来ると

優しい笑みを浮かべながらも
やっぱりどこか、冷たい言い方。





それでも私は気にしないふりをして

花火大会の話題を出す。








「来週の花火大会、一緒に行かない?」








私がそう尋ねると

春樹くんは「あ〜…。」と
少し考える素振りを見せて


それから私に返事をした。








「ごめん、多分それ
今年も家族で行くと思うから 行けないや。」

「え…あ、毎年家族と行ってるの?」

「うん。そうなんだ。」







だから、ごめんね?





眉を下げながら
優しい顔でそう謝る春樹くん。





…そっか…家族となら、仕方ないよね。








「ううん、大丈夫。
ごめんね、お邪魔しました!」








私は笑顔を作って
そう返すと

春樹くんは「じゃあまた。」と言って

また輪の中に帰っていく。







私も

自分のクラスに戻った。






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