日野雄大はクラスで一番性格が悪い
……どうやら俺は、助かってしまったらしい。
俺が飛び降りたときちょうど強い風が吹いていて、落ちたのは植え込みで、衝撃を和らげたのだとか。
目覚めたのは昨日の夜だった。
俺は病院のベッドで眠っていた。
ごめん日野ちゃん。俺失敗したみたいだ。
「雄大、お花の水変えるわよ」
仕事に行かなくていいのだろうか。
いつだって俺のことはほったらかしで仕事ばかりだった女は、昨日からほぼ俺に付きっきりだ。こいつだけでも昨日墓参りに行けば良かったのに。
「何か本でも買ってこようか。暇でしょ?」
……体中痛い。きっと本を持つのもしんどい。
「……日野ちゃんに、」
「ん?」
「日野ちゃんに、会いたい」
女の顔から微笑みが消える。
俺だって分かってる。
分かってて言ってみたんだ。
……日野ちゃんが俺に会いに来ることなんか無い、って。
俺も懲りないやつだ。
日野ちゃんの前から消えるために死のうとしたのに、目覚めて早々日野ちゃんに会いたい、なんて。