あの日、君と見た青空を僕は忘れない
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「幸?」
ぼーっと窓の外を見ていた私に、ママが声をかけた。
「…ママ」
言っちゃいけないことを
「なに?」
ママは笑顔で私の着替えをハンガーにかけながらそう言う。
「…なんで私なのかな…」
「幸…」
自分で命を絶とうとする人がいて
悪いことする人たちがいて
なんで私なの?
「…なんで…今なのかな?」
高校生なんて…
まだまだやりたいことばかりだよ。
涙が溢れてくる。
「幸…ごめんね…ママ、何にもしてあげられなくて」
ママのせいじゃないのに。
もっと元気だったら。
病気じゃなかったら。
舞ちゃんと
小池くんと
クラスのみんなと
黒田くんと
もっともっと居られるのに。
命の短さを感じないで目一杯、今を楽しめるのに。
なんで。
なんで。
我慢していたものが。
また溢れる。
「…ママ…私やだよ…」
大丈夫じゃない。
治らない。
そんなことばかり思ってしまう。
楽しい思い出を作れば作るほど。
好きな人を好きになればなるほど。
死ぬのが嫌になる。
こんなことなら、ずっと病室のベッドで寝てればよかった。
「…死にたくないよ…」
ぐちゃぐちゃになった顔で、私はそう訴えた。