あの日、君と見た青空を僕は忘れない
ガチャ
幸とイチャイチャしていたら、屋上のドアが開いて、俺と幸は慌てて離れる。
夫婦の時間を邪魔しやがって…誰だ。
「パパ!」
と幸。
「幸、ママが呼んでるぞ」
お父さんにそう言われ、幸は車椅子に乗り、お父さんと一緒に来ていた看護師に車椅子を押してもらう。
「あ、大翔くんは話があるから、その座って」
お父さんはそう言うと、ベンチに腰掛けた。
幸は心配そうにこちらを見ながら、お父さんに「黒田くんのこといじめないでよ?」
と言って、屋上を出て行った。
「あ、あの、俺の勝手な願望で…その」
お父さんには、しっかり結婚式の許可をもらって行ったが、やっぱり緊張する。
「大翔くん、本当にありがとう」
お父さんはそう言って深く俺に頭を下げた。
「え、いや、俺はその…」
「幸が余命宣告された時、何もかも諦めてたんだ。成人式も結婚式も孫も何もかも。親だから、幸はずっと生きてくれる、絶対治るってもちろん願ってる。でも、ふと明日、明後日、幸が…なんて、考えたくなくても考えちゃうんだよ」
「はい」
「親より子供が先にって…あってはいけないよな…」
「幸のおかげで。俺は目標ができました。幸のおかげで、どうにでもなれって思ってた毎日が楽しくなりました。それななのに、俺何もできなくて…幸にたくさんもらったのに…」
「諦めてた結婚式。幸の花嫁姿。見させてくれてありがとう。大翔くんは幸にいろんなことをしてくれたよ。大翔くんと出会えたことで、幸は笑顔が増えた。本当にありがとう」
「…いえ…」
「幸のこと、好きになってくれてありがとう」
好きな子のお父さんにそんなこと言われるなんて、思ってもなかった。
大人を拒絶してた俺が。
今こうして、話せているなんて。
幸。
お前のおかげだよ。
「おせっかいで、頑固な子だけど、繊細で優しい子だから」
「知ってます。本当は泣き虫で」
「一人っ子だから甘えん坊なんだ」
「やっぱり」
「…大翔くん、最後まで、娘のそばにいてくれないか?」
いいのだろうか。
この俺で。
彼女のそばにずっといたい。
彼女の温もりをそばで感じたい。
そう強く思ったから。
「はい。ありがとうございます」
強くそう答えた。