あの日、君と見た青空を僕は忘れない
相沢と小池は少ししてから、気を使って、俺と幸を2人きりにしてくれた。
冬休みが始まって、幸といる時間は増えたけど。
こうして、初めて出会ったこの場所で、あの日を思い出すのは少し照れる。
「…見て…大翔くん…」
幸はそう言ってまた上を見上げる。
そして、その時初めて気がついた。
幸がよく空を見上げる理由が。
「…幸」
幸は上を見上げながら泣いていた。
たくさんの涙をこぼしながら。
「…ガンって診断されてから。…余命を…宣告されてから。ずっとこうして、空を見上げるの。不意に涙が溢れることが増えたから。こぼれないように」
幸は泣きながらそう話した。
知らなかった。
初めてあったあの時も。
夏休みの夜も。
空を見上げたあの瞬間、幸はいつも涙を我慢していたんだ。
「…幸。ここで俺の手を引っ張ってくれてありがとう。始まりは全部、幸のおかげだったよ」
幸は泣きながらうなづく。
「…幸」
「…大翔くん…」
幸は俺の手を強く握りしめた。
「…死にたくないよ」
幸は震えた声でそう言った。
「…大丈夫。幸は大丈夫。俺がいる。何があっても俺がそばにいる。絶対にっ」
俺も泣きそうになり、思わず幸を抱きしめる。
「愛してるから」
何があっても。
「ずっと、そばにいるから」