専務とお見合い結婚!?


何でも包み込んでしまいそうなほど、大きな手。


その手で、何人の女の人を抱きしめたんだろう?



「やめて下さいよ。さて、お昼行ってきますね」


「あ、そのうち時間作るから、オレと一度食事しないか?」


「え、結構です。専務の自慢話は聞き飽きたんで」



苦い顔を思いっきりしながら答えると、専務は苦笑した。


教育係をしてもらっていた時も、専務と何度か食事に行った。


食事って言っても、居酒屋がほとんど。


学生時代の恋愛話を嫌というほど聞かされていたし、またそれを繰り返し聞かされるのはウンザリ。



「今度は夜景の見えるレストランで、どう?」


「ドラマで聞いた事あるようなセリフですねー」


「夕べ見たドラマで言ってたかな」


「忙しいのでからかうなら他をどうぞ。失礼します」



とぼけた様子の専務を置き去りにして、私は財布を手に、部屋を出た。


< 6 / 82 >

この作品をシェア

pagetop