専務とお見合い結婚!?
ああ、そういう事……。
専務の結婚を待ち望んでいた会長夫人の体調が良くなくて、村上グループは専務の結婚に慌てたって事ね。
でも、正規の相手である横手総合病院の娘が仕事で日本に不在だったから、傍にいた部下の私を代役にたてたわけ。
確かに専務とさやかさんはお似合いだった。
「……専務。それでは、私はこれで失礼します」
「おい、かすみ……」
「お疲れ様でした。お先に失礼します」
「今までご苦労様」
フフンと鼻で笑うさやかさんだけは見たくなかった。
深々と頭を下げてから、すぐに踵を返して、私はエレベーターに乗り込んだ。
「……あ、あはははははっ!」
誰もいないエレベーターで思わず笑ってしまった。
夢は夢で終わるから、幸せな気持ちになれるんであって……。
私が専務と結婚できるなんて、やっぱりありえない事だったんだ。
「……っく」
笑った後、涙がこぼれてきた。
あきらめようとした恋を拾い上げて、勝手に再燃して爆発させたのは私自身。