専務とお見合い結婚!?
専務は結婚して欲しいと言っただけで、私が好きだとは一言も言っていないのだから。
先を読む目がないなと、自嘲してしまう。
誰のせいでもない、傷ついたのは自分の責任。
少しでも夢のような時間を過ごせたんだから、それでいいじゃない。
「……代役にキスまでする事ないのに。バカ専務」
唇に触れながら、少しだけ専務への悪態をつく。
エレベーターの扉が開き、1階に着いた。
きらびやかなホテルのエントランスに、まぶしくて思わず目を細めてしまう。
私には似合わないこの場所に、二度と来ることはないだろう。
「……良かった。誰にも話してなくて」
お見合いの話は誰にもするつもりなんてなかったけれど、本当に話さなくてよかった。
誰も知らないまま、変わらずにまた明日から仕事ができるんだから。
ホテルの回転扉から外へ出ると、私は家に向かって歩き出した。