ボディーガードにモノ申す!
あーだこーだ言ってたって、仕事が終わったら真山がお店の外で待っている。
ヤツの顔を見たら問い詰めてやろう。
どうして昨日なあんなことをしたのか、と。
そう心に決めてその日1日の仕事に励み、30分ほどの残業はしたものの大きな問題もなく佳織ちゃんにレジ締めを託してお店をあとにした。
裏の通用口から出る時には、もう私の心臓はバクバク言っていて。
真山の顔を見たら赤面してしまわないか心配になるほどだった。
中学生じゃないんだから、私ってば。
深呼吸をして、ゆっくり外へ出て辺りを見回す。
真山らしき人物は…………………………、いない。
いつも彼が待機している隣のビルの壁ぎわにも、誰もいない。
もしかしたら昼間の警備の仕事が押してるとか?
いや、まさかとは思うけど、私を狙ってた誰かに勘づかれて襲われちゃったとか?
大怪我をして病院にいるとか?
ドラマの見過ぎのせいで、妄想力もだいぶ豊かになってしまった。
おとなしく待つことにしよう、と隣のビルの前に立った時。
私のすぐそばにいつの間にか1人の女性が近づいてきて、笑顔で声をかけられた。
「広瀬椿さん、ですか?」
突然声をかけられたので、不審者なんじゃないかとビックリして固まっていたら、40代後半と思しき小太りの女性はおおらかに笑った。
「あらあら、警戒させちゃってごめんなさいね。私はニシジマ・セキュリティーの者です。初めまして、谷川と申します」
谷川さんに差し出された1枚の名刺。
そこには確かにニシジマ・セキュリティーの文字と、「谷川和代」という名前が記載されていた。
こう言うと語弊があるかもしれないけれど、スーパーの激安タイムセールなんかにいの一番に駆けつけそうなガッツのある肝っ玉母ちゃんといった感じの人だった。