ボディーガードにモノ申す!
「初めまして、広瀬です」
「綺麗なお嬢さんですねぇ。社長が広瀬さんのことベタ褒めだったのよ〜」
「い、いえ!全然!モテなくて困ってます」
「私のことは和代って呼んでね」
「じゃ、じゃあ私は椿で……」
買い物帰りみたいな感じで、彼女は紙袋を2つとトートバッグを持っていた。
なんでもない普通の会話をしながら親しみやすさを感じる一方で、嫌な予感がした。
「あの、和代さん。昨日まで私を担当していた真山さんは……」
和代さんにおそるおそる聞いてみる。
予想している答えなんか返ってこないで、と祈りつつ。
しかし、現実はそう甘くない。
彼女は意外そうな顔をして、すんなり答えた。
「あれ?タケルくんから聞いてなかった?今日から担当変更なのよ。ほら、椿ちゃんが女性希望って申請してたでしょ?私の手が空いたので、変更になったの」
「そ、そうなんですか……」
「一昨日の時点で決まったんだけど……。タケルくんにも伝えてたはずなのにね。そりゃ私が急にいたら椿ちゃんもビックリするわよねぇ」
困っちゃうわね、と笑いながら話す和代さんに合わせてどうにか笑顔を浮かべる。
そうだ。
担当を女性にして欲しいと言っていたのは私なんだ。
だから変更になるのだって遅かれ早かれ間違いの無いことだったのに。
あまりにもあっけなく真山が来なくなったから、拍子抜けしてしまった。