ボディーガードにモノ申す!


気を取り直して、私はこれからお世話になるであろう和代さんに向き直り、きちんと頭を下げた。


「今日からよろしくお願い致します」

「こちらこそ、よろしくね。もしも変な男が現れたら張り倒してやるわ」


あはははと元気に笑い飛ばす和代さんのその言葉で、彼女が男を張り手でどついている姿を思い浮かべてしまった。


とりあえずいつも通りということで、会話を楽しみながら2人で気楽に歩き出した。


真山以外にボディーガードについてもらったことがなかったから、今回初めてわかったけれど。
彼女は真山のように少し後ろを歩くことはしない。むしろ隣をガッチリキープするようにして歩く。


ただし視線は常に注意を払っているのか、キョロキョロと辺りを観察しているような感じだった。


「帰りのコースのことや、椿ちゃんの周りをとりまく何人かの怪しい男の話とか、護身術を教えるっていう話はタケルくんから聞いてるわ」


不意に話し出した和代さんは、驚く私にウフフと楽しげに笑みを浮かべた。


「しっかり申し送りはしてもらってるから安心してね」

「………………はい」


優しそうな和やかな笑顔の中にもどこか芯の強さも感じさせる和代さんは、きっと女性ならではの視点で寄り添ってくれて、共感しながら守ってくれる。
これ以上ないくらいのボディーガードになるだろう。


それは喜ばしいことのはずなのだ。


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