ボディーガードにモノ申す!


「ま、まさかっ。全然そんなこと1ミリも思ってませんよ!あの人けっこう個性的っていうかクセが強いから、次の担当になっちゃった人が大変だろうなーなんて思ったりしただけです!」


急いでまくし立てるように言い訳をしたら、和代さんは面白そうに吹き出していた。
こういうベテランぽい人には、私の気持ちなんて手に取るように分かるんだろうな。
そう思うと恥ずかしくなった。


そんな私を知ってか知らずか、彼女はわざとらしく声を潜めて、


「心配しなくても大丈夫よ。彼は外面がいいからね」


とウィンクを飛ばしてきた。
思わず「確かに」と吹き出しているうちに、電車がホームに到着した。


ドドドッと押し寄せる乗客の波に乗って車内に乗り込み、どこか掴めるところはないかと手すりを探す。
隣を見ると、和代さんも苦しそうな顔をしながら手すりを探していた。


「もうっ、こういう満員電車は女にはツラいわよね!」


プリプリと怒ったように見せる彼女に、私も人と人の隙間からどうにか顔を出してうなずいて見せた。


和代さんは女性として同じ目線で話せるし、会話も弾む。


だけどやっぱりどこかで真山のことを考える。
彼だったら、すんなりドア側へ誘導してくれて、迫り来る人の波から身を呈して守ってくれていたな、と。


思い出す度に胸がチクリと痛んだ。



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