ボディーガードにモノ申す!


帰りの電車の中で運良く座席に座ることが出来た私は、今日1日のことを思い出していた。


朝から杉田さんに話しかけられて、カフェで貝山くんという新人スタッフに話しかけられて、店長の橋浦さんと仕事をした。
3人はまず間違いなく私にとって無害な男たちだ。
これで1日が終わったならいつもと変わらない穏やかな日だったのに。
最後のあのイヤミったらしい男が余計だった。
どう考えても私には有害すぎるあの男。


もう二度と会うことなんて無いだろうから、もっと言いたいことをビシッと言ってやれば良かった。


正面の窓ガラスには、少し疲れた顔の私がいた。
くそぅ、自分で言う分にはいいけど他人から「オヤジ」って言われると嫌なもんだな。
○○女子という言葉が流行している世の中で、オヤジ女子なんて傍から聞いたら残念以外の何者でもない。


朝早く起きて一生懸命鏡の前でコテを駆使してアレンジした髪の毛を、ぐしゃぐしゃにしてストレス発散したい衝動に駆られた。
家に帰るまではやらないけどね。
ここでそれやったらとんでもないへべれけ女だと思われてしまう。




━━━━━その時。


フッとどこからか視線を感じた。





ん?と不思議に思って辺りをキョロキョロ見回す。
座席はほとんど埋まり、立っている人もそれなりにいる車両。
ザッと見た感じでは知り合いはいないようだ。
死角になっている人の顔までは確認することが出来ないし、気のせいかもしれないし。
あまりに気にしないことにした。


< 13 / 153 >

この作品をシェア

pagetop