ボディーガードにモノ申す!
10、 しっかり守ってね。
━━━━━その後。
私は三上くんが運転する車の助手席に座っていた。
後部座席には真山と貝山くん。
貝山くんは憔悴しきったような疲れた顔をして、どこか遠くの方を見ている感じだった。
それもそのはず。
先ほどまで真山から私の干物女っぷりを散々聞かされていたからだ。
貝山くんは広瀬椿という私を、信じられないほど美化していたらしい。
そりゃ販売員なので外面はいいし、仕事柄服装や髪型にも気を遣っているつもりだ。
だけどそれはあくまで家の外での話。
彼は私が家の中ではヒラヒラのネグリジェを着て寝ていると思っていたし、部屋の中はいつもどんな時も整理整頓されたものであると思っていたし、もちろん料理も作っていると思っていたし、お風呂上がりにはパックをして念入りにストレッチなんかをしながら野菜のスムージーを飲んでいると思っていたらしい。
どこの読者モデルの話だよっ!
その真逆の生活を送ってるっつーの!
そう言い捨てたら、貝山くんは金タライをダイレクトに頭の上に食らったようなショックを受けて、それ以降何も話さなくなってしまった。
「まさかあの時の犯人が、本当に椿ちゃんのストーカーだったとはね」
運転しながら三上くんがルームミラー越しに貝山くんを見やる。
心ココにあらずの彼を見て、苦笑いしていた。
「タケルの予想通りだったわけだ。会えなくなって痺れを切らして向こうから接触してくるだろうって言ってたもんな」
「そういうこと」
後ろを振り向かなくても分かる。
きっと真山はニヤリと得意げに笑っているだろう。