ボディーガードにモノ申す!
私はわざとらしくジィ〜ッと真山の顔を見つめてやった。
戸惑ったように彼の表情が歪む。
「なんだよ、他にもなんかあるのか?」
「………………あのキスって、なんなの?」
「は?」
「したじゃない、ここに」
人差し指で自分の唇の横を指して、眉を寄せて彼に不満をぶつけた。
「なんなのよ、あれ。するならちゃんとしなさいよ。男らしくないよね」
「なっ……とんでもないこと言うんだな。そんなに欲求不満だったのか?」
「ち、違うわよ!」
廊下で言い合っていたら、和代さんがニヤニヤしながら部屋から出てきた。
「おふたりさん、会話が中まで丸聞こえよ〜」
それを聞いて、私と真山はお互いにそっぽを向いて顔ごと逸らす。
「声がデカいぞ、オヤジ化した干物女」
「もぉ〜しわけございませぇ〜んねぇ〜」
ヤツの失礼な発言に対して茶化すように言葉を返したら、和代さんが肩を震わせてクスクス笑っていた。
「仲がいいんだか、悪いんだかねぇ」
「良くはないですね」
即答する真山をギロリと睨んでやった。
どうしてこの人はこういうことしか言えないんだろう。
そんな私たちを、和代さんは「あらあら」と困ったような顔をしてため息をつきながら眺めているのだった。