ボディーガードにモノ申す!
アパートももうすぐそこだというあたりで、真山がふと思い出したように立ち止まった。
つられて私も立ち止まる。
正直、まださっきの衝撃は抜けないままだ。
そんな私に彼が近づいてきた。
「君の気持ちも、大体分かってるつもりだけど。念のため聞いておこうか」
ジリッと距離を詰められる。
分かってるつもりってどんだけ自信家なのよ、というツッコミを入れる余裕など、今の私には無い。
「わ……分かってるならわざわざ言わなくてもいいでしょ?」
「念のため」
「反応見て楽しんでるでしょ」
「バレた?」
フフッと真山が笑う。
その笑顔はこれまでの中で一番楽しそうな、素の彼の表情なんじゃないかと思えるほどだった。
「まぁ、その……なんていうか…………、私も、好き」
数年恋をしていない干物女からすると精一杯の「好き」を伝えたつもりだったのに。
真山は右手を耳に添えて、「え?」と聞き返してきた。
「椿、聞こえない」
「き、聞こえないわけないでしょ!今けっこうなボリュームで言ったじゃない!」
「喚くな、近所迷惑だ」
くっそ〜、なんなのよ!
他人をいじめてそんなに楽しいか!
どさくさ紛れに「椿」とか呼んでるし!
自信満々じゃないの!
地団駄を踏みたいところを押さえて、もはや涙目でヤツを睨みつけた。