ボディーガードにモノ申す!
「心配しなくても、僕は広瀬さんのことは諦めてますからご心配なく。……って言っても、勇気も出なくて告白さえ出来なかった僕は、同じ土俵にも立ててませんでしたけどね」
私と真山の会話を聞いていたのか、申し訳なさそうに杉田さんが小さく肩をすくめた。
一体いつから私はこんなにモテるようになったんだっけ?
干物女じゃなかったの?
そうか、これがいわゆるモテ期ってやつなのね。
長い間恋人がいなかった杉田さんは、自分でも気づかないうちに私を好きになっていた……らしい。
時々、朝に会えるのが楽しみになっていたというから驚きだ。
もっとちゃんと周りに注意を向けることが出来ていたなら、貝山くんみたいなストーカーを生み出すこともなかったのかな、なんて思うこともある。
責任を感じることはないと真山は言ってくれたけれど、少しだけ罪悪感も残ったりして。
偽善になるのかな。
「僕、今月末に引っ越すことにしたんです」
ライブ中なので、声をひそめて杉田さんが耳打ちしてきた。
「えっ!そうなんですか!?」
「はい。いつまでも失恋を引きずってもいられないので。心機一転、引っ越しをしてみようかと。だから今日は広瀬さんとの、最初で最後の思い出です。今まで本当にありがとうございました」
深々と頭を下げられて、私も慌てて同じようにペコッと頭を下げる。
真山は軽く会釈していた。
「だから、今日は楽しみましょうね」
どこか吹っ切れたように笑う杉田さんを見て、私も楽しまなくちゃと気付かされた。
はい、となるべく明るく聞こえるように返事をした。