ボディーガードにモノ申す!
どれだけ自信があるのかは分からないが、とりあえず私よりはどうやら女子力が高い部屋に住んでいると言いたいらしい。
しかも料理まで得意とか聞いてないぞ。
「あのね、私だって頑張って部屋を片付けたのよ!むしろそこをちゃんと見てほしいくらいだわ」
「どうせすぐ散らかるだろ」
「勝手に決めないでよ!」
「どうする?来るのか?来ないのか?」
ニヤリと勝ち誇ったような笑みを向けてくる真山を見て、こいつは私の答えを先読みしているんだなと察した。
まぁ、今日くらいは素直になるか。
「……行く」
こちらの口元まで自然と緩んでしまった。
私の表情を見て、彼が満足げに歩くスピードを少しだけ速める。
「えーと、つまり。専属のボディーガードになってくれるってことでいいのよね?」
どんな反応を示すのか試したくて、遊び心を交えた「お付き合い」を提案してみた。
すると真山は余裕の微笑みを私へ見せつけ、さらに人差し指を突きつけてきた。
「もちろん、それは大前提。ただしひとつだけ忠告しておく」
「忠告?」
首をかしげる私に、彼は淡々とした口調で言い放った。
「専属ボディーガードになったら、あんなキスじゃ済まさないからな。それだけ覚えておいて。じゃ、行こうか」
広瀬椿、ついに干物女は脱出出来そう……だけど。
この専属ボディーガードに翻弄される毎日がやってきそうな予感がした。
それはとびきり幸せな予感。
繋いだ手から、ほんの少し愛が溢れた気がした。
おしまい。