ボディーガードにモノ申す!
いよいよ熱が上がり出したあたりで、ようやくヒーローのお出ましだ。
エミリの恋人で御徒町に住む男、ヤマトの登場だ。
『てめえ!何してる!』
どこから来たのか、ヤマトは駆けつけるなり男を殴りつける。
臨場感溢れるカメラワークに私の鼻息も荒くなった。
「来た!ヤマト来た!」
ビールを飲む手は完全に止まっている。
ヤマト役の俳優さんは、今回のドラマで初めて「かっこいいかも」と思うようになった人だった。
ちっとも好みじゃなかったけど、ヤマト役がピッタリというか。
ものすごく彼に合っていて、毎度ドキドキさせられているうちにかっこよく見えてきたのだ。
『俺の大事な恋人に触るな!』
ヤマトは倒れた男にそう言い、そして決めゼリフ。
『いいか、もう一度彼女の前に現れてみろ。俺はお前に何をするか分かんねぇからな』
「きゅーーーん!!」
パタっとその場に倒れる私。
倒れたまま、テレビの中で抱きしめ合うエミリとヤマトをじっと見つめる。
『何やってんだよ、エミリ……俺を頼ってくれよ』
『ごめん、ヤマト……。迷惑かけたくなくて』
『バカだな。エミリに何かあったら、悲しむのは俺なんだぜ?』
『ヤマト……』
『エミリ……』
2人は見つめ合い、そっと口づけを交わす。
さっきまで殴られて倒れ込んだ男はどこへやら。もういつの間にか退散したのかしら。まだいたとしたら、目の前でキスシーンなんか見れたもんじゃない。
ベタな展開しか無いっていうのに、私はこのドラマに夢中だった。
今日みたいなちょっと非現実的な展開も悪くない。何よりヤマトが素敵すぎる。
人間の心理って不思議。
どうでもいいとか興味無いとか思ってたはずの人が、ふとしたきっかけでこんなにかっこよく見えるとは。
ヤマト役の人、これは大当たりだわ。
私はニマニマ笑いながら、「今週もごちそうさまでした〜」って幸せのため息をついた。