ボディーガードにモノ申す!
この時間にメールやラインが来ることはあっても、電話が来ることはあまり無い。
清恵あたりが相談事でよこしたのかと画面を見てみたけれど、知らない番号からだった。
しばらく登録されていない番号をまじまじと見ていたけれど、鳴り続けるスマホの着信音を聞いているうちに考えが変わった。
もしかしたら誰かが急用で何らかの理由があって、友達の携帯を借りて電話をしているのかもしれない。
そうだとしたら無視するのは失礼だ。
画面をスワイプして電話に出た。
「はい、広瀬です」
一応、名前を名乗ってみる。
万が一、仕事関係の人だったら非常識な態度は取れないからだ。
ところが、電話の向こうに誰かの気配は感じるものの、ちっとも声を出さない。
しんとした空気が電話から流れてくる。
あれ、私の声が聞こえなかっただろうか?
「広瀬ですが、どちら様ですか?」
もう一度名乗ってみた。
しかし、相手の反応が無いのは同じだった。
微妙に怖くなってきた。
どうしようか悩んだ挙句、私は思い切って告げた。
「も、申し訳ありません!切ります!」
電話を切ってから、思わずつぶやく。
「なに、今の……。間違い電話?……怖っ」
間違い電話だとしたら、怒ったりしないから「間違えました」って素直に言いなさいよ!
さっきのドラマでストーカーみたいなのを見たせいで、ちょっと気味悪くなってしまった。
自意識過剰なのは分かってるけども。
スマホを即刻サイレントモードに切り替えて、布団をかぶって目をつぶった。