ボディーガードにモノ申す!
で、職場に来ると必ず顔を合わせる異性と言えば。
店長の橋浦さん!この人しかいない。
スラリと細身の体型で、何があっても動じない経験値の高さがあり、ずば抜けたセンスを持っている。
決して若作りしているとかじゃなく、若々しい。
佳織ちゃんが憧れるの、なんとなく分かるなぁと感じるのだ。
今日の橋浦さんは黒いフレームの伊達メガネをかけて、キャップをかぶっている。
こうなってくるとますますあの日本人メジャーリーガーに似てくるんだけど、それを本人は否定する。
「あんな大物と一緒にされたら気が引けるよ」と。
平日なので佳織ちゃんが休みで、私と橋浦さんが出勤だ。
「来週水曜、表参道でやる展示会に行くことになったから。悪いけど広瀬のシフト変更しておく」
お客様がお帰りになり、たまたまお店に人がいなくなったタイミングで橋浦さんにそう言われた。
その顔はちっとも申し訳なさそうじゃない。
「橋浦さん…………、その日私、希望休出してたんですけど……」
不満たっぷりに私が言葉少なに訴えると、彼は笑みを浮かべて肩をすくめた。
「だから悪いって言ったろ?お前のことだからどうせくだらない用事だろ。彼氏もいないんだろうから」
「そ、そりゃいませんけどね!友達とランチの約束してたんです」
「相変わらず色気ねぇなぁ」
「ほっといてくださいっ」
頬を膨らませて彼を睨んでいたら、橋浦さんは何かを思い出したようにアゴヒゲをさすりながら目を細めてきた。
「そういえば、元木に聞いたぞ」
「佳織ちゃんに?何をですか?」