ボディーガードにモノ申す!
早番は18時半で上がれる。
私の働くセレクトショップがお客様で溢れかえるなんてことは、セールの時期くらいしかない。だからほとんど時間通りに帰ることが出来る。
日中はポカポカ陽気でも、朝晩はまだ少し肌寒い気候。
今日はトレンチコートを羽織ってきた。
駅のホームで電車を待ちながら、スマホで清恵に連絡を入れる。
ライン画面を開いて、来週の水曜日が仕事になってしまったことを伝えるため、文章をうつ。
橋浦さんめ!
今度ビールでもおごってもらわないとな。
いや、ここは脱・オヤジ女子ってことで甘いカクテルにしておくか。
そんな中、一瞬ピンと張り詰めたような空気を感じて顔を上げて辺りを見回す。
電車を待つ人が大勢並んでいるが、特に知り合いは見つけられない。
なんとなく、視線を感じたような気がしたんだけど……気のせい?
前にもこんなことがあったな、と思い出しつつスマホに視線を戻した。
電車が到着し、次々に人々が乗り込んでいく。
この波を逃すと乗れなくなるので、周りの人に合わせるように車内に乗り込んだ。
清恵にはしっかりお詫びのラインを送ったあとだったので、スマホはバッグに戻した。
あっちに着いたら、コンビニに寄ってお弁当でも買うか。
お酒を飲みながら、昨日録画した『御徒町の恋人』をもう一度見よう。エミリとヤマトに会おう。
明日は仕事も休みだから、久しぶりに漫画喫茶でも行っちゃおうか!
ぎゅうぎゅうの電車も気にならないくらい、私の心は浮かれていた。
休みの前日は羽を伸ばして夜更かし出来るから大好きだ。