ボディーガードにモノ申す!
私の頭の中は、帰ったらドラマの録画を見ることとかお酒をのんびり飲むこととか、明日になったら漫画喫茶に入り浸ることとか、そんなことしか考えていなかった。
だから、自分の背後になんて気を遣うわけも無くて。
電車を降りてコンビニに立ち寄って、食べたかった塩豚納豆ネギ弁当と少しのおつまみとビールを買って、鼻歌でも歌っちゃおうかってくらいの気持ちで夜道を歩いていた。
時刻にして19時半。
決して遅い時間とかじゃない。人通りもある。
ただ、駅からアパートまで歩く15分の道のりで、一箇所だけ近道できる場所があるのだ。
車が通ることは難しそうな、細い細い路地。
そこを抜けると3分くらい短縮出来るから、早番遅番飲み会構わずいつも利用している道だった。
塀に囲まれた細い路地を歩く。
コツコツと私のヒールの音が響く。
遠くで学生なのか若そうな声が聞こえる。
警戒心、ゼロ。
注意力も、ゼロ。
その隙を、つけこまれた。
誰もいないと思っていた背後から、突然抱きつかれた。
瞬時に口を塞がれる。
私は驚きよりも何よりも、まず自分の身に何が起こったのかが分からなかった。
身体にドンと衝撃が走り、背中に密着する誰かの身体。そしてお腹のあたりに回された腕。
ドサッとコンビニの袋を落としてしまった。