ボディーガードにモノ申す!
頭は混乱し、口を塞がれて息苦しいのと恐怖心が一気に沸き上がり、辺りに誰も人がいないことに絶望感を感じた。
━━━━━私、襲われてる!
それだけを、ようやく理解した。
耳元には、ハァハァと荒い息遣いがダイレクトに聞こえてきて鳥肌が立つ。
どうにか悲鳴とか大声とか出そうとするものの、口を塞がれているからとかじゃなくて、怖すぎて声が出ない。
無言で無我夢中で抵抗した。
身体にまとわりつく腕を剥がそうと力を込めるけれど、ビクともしない。
その手は次第に私の胸まで上がってきて、言い知れぬ嫌悪感に襲われた。
昨夜、ドキドキワクワクしながら見たドラマのワンシーンが頭を掠めた。
なにこれ、これって現実なの!?
私、このままやられちゃうの!?
声も出ない、動けない。
テレビを見ていた時はあんなに勢い良く「股間に蹴りを入れて!」とか「頭突きしろ!」とか言ってたけど。
そんなの出来っこない!
頭をブンブン振っていたら、耳たぶに痛みが走った。
それがなんなのかさえ、分からないほどパニックに陥っていた。
ただその時、耳元で小さく呻く男の声を聞いた。
「ひ……、ろせ……」
!?
私の名前を知っていることにびっくりしたけれど、それより先に男の腕が一瞬緩んだのが分かった。
どうにかこじ開けて走り出す。
パンプスは途中で脱ぎ捨てた。
昨日エミリが走りづらそうにしていたのを思い出したからだ。
アスファルトの上を裸足のまま全速力で走った。