ボディーガードにモノ申す!
3、 ボディーガード、登場。
「広瀬椿さん、28歳ですね。世田谷区にお住まい……と。襲われたのってこの地図で言うとどのへんか覚えてる?」
ベテラン警察官といった印象の、50代くらいの男性がスーツ姿で私の真向かいに座っている。
私は初めて自宅から一番近い警察署に来ていた。
取り調べとは違うので、普通の明るい照明のある談話室のようなところで話を聞いてもらっている。
もらった名刺には『恒松浩』の文字。
勝手にベテランのツネさんと呼ばせてもらおう。
ツネさんは白髪混じりの頭をボリボリかきながら、手元にある地図を私に見えるように差し出してきた。
私は目を凝らしてその地図から、襲われた場所を探す。
「細い路地なんです……。地元の人しか通らないような感じの。たぶん、このへんかな……」
「はい、ここね。で、自宅はここで合ってるかな」
「合ってます」
ツネさんが赤いボールペンで被害に遭った場所と私のアパートの場所に印をつける。
私の名前、住所、生年月日、実家の住所、勤務先など、基本情報はすでに書類に書き終えた後だ。
1時間ほど前に襲われた件について、詳しく話さなければいけないところまで来た。
とりあえず被害届を出すことにしたのだ。
そういうことがあったと警察に知ってもらうためにも。
ゴホン、と中年男性特有のたんが絡まったような咳をしたツネさんは、閉まっているドアに向かって「おーい」とひと声。
「三上くん、お茶〜」
「はーい」
どうやら扉の向こうにいる部下にお茶を持ってくるように要求したらしい。
その「三上くん」という部下はすぐさま現れた。