ボディーガードにモノ申す!


「その後、どうにか逃げ出した時にヒールの高い靴を履いていたので、脱ぎ捨てて裸足で走りました」


私の言葉を聞いて、2人の警察官は耳たぶから足に視線を移した。
今はスリッパを借りているが、これはあくまで来客用のものらしい。帰りの靴はどうしようかと困っているところでもある。


「怖い思いをしたね。他には何もされてないね?」


冷静なツネさんの問いかけで、私はとあることを思い出してグッと言葉に詰まる。


「ん?何かされたのかな?」

「えーっと…………それは……」

「話してもらえると助かるんだけど」

「……………………む、胸を触られました」

「………………ふむ」


2人の警察官の視線が足から胸へ移る。
どう見てもお世辞にも大きいとは言えない自分の胸を、さりげなくトレンチコートで隠しておいた。
エロオヤジとエロ野郎が2人。ジロリと睨んでおいた。


「ゴホン。つまり犯人の顔は見ていないと」


仕切り直しとばかりに咳払いしたツネさんに、私は身を乗り出すようにして訴えた。


「顔は見ていませんが、男でした」

「なぜ分かるのかな?」

「声が男性の声でした。それに……」

「それに?」

「私の名前を知っていました。呼ばれたんです、名字を」

「……………………なんと、それはそれは」


ツネさんと三上くんがチラリと目を合わせて、何か含んだようにうなずき合う。妙なアイコンタクトが気になった。
そして静かにツネさんが口を開く。


「そうなってくると、相手の男は君が広瀬さんだと知った上で襲ってきた可能性が高い。…………つまり、最初から狙っていたと考えた方がしっくり来る。誰かにストーキングされていたとか、そういう心当たりがある人はいない?」


なんだか他人事のように思えてしまった。
テレビドラマとかニュースでしか聞いたことがない言葉が出てきて、頭の中をぐるぐる回る。
私をストーキングしている人がいる?
私のストーカーがいる?
そんなことって本当にありえるの?


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