ボディーガードにモノ申す!
かろうじて出た言葉は、弱々しかった。
「心当たりなんて……ありません」
昨日のドラマの中で怯えていたエミリ。
彼女の立場になってようやく分かった。どれほど恐ろしいことなのかということを。
そして同時に、私には頼れる人がいないということにも気がついた。
ヤマトのように無条件に守ってくれる人がいないのだ。
「一応、君の自宅の近くは巡回を強化するようにはするけど……、申し訳ないが警察に出来ることはそれくらいしかない」
冷たいようにも聞こえるツネさんの話に、私は返事もなくただうなずくしかなかった。
本当に危険な目に遭った時くらいしか動いてくれないってことは知っている。
今日の件はまだ軽い方なのだ、きっと。
実際に酷い扱いを受けたり、暴行を受けたわけじゃない。
それだけでは警察は動くことは出来ないのだ。
すると、それまでしゃべることのなかった三上くんが不意に声を出した。
「自己防衛に努めてください。人通りの少ない場所は通らず、遅い時間に帰宅しない。どうしてもという時はタクシーで帰る。防犯グッズを持ち歩く、などあります」
「………………あの、もしも……」
私は2人を見比べて、あまり期待はせずに提案してみた。
「もしも頼んだら、警察の人とか私のアパートを見張ってくれたりしますか?」
「見張り……。警備をつけるってことですよね」
ツネさんの代わりに三上くんが答えようと顔を上げる。その顔は案の定というかなんというか、申し訳なさそうなものだった。
「非常に申し訳ないのですが、それは出来ません。仮にその申し出を引き受けてしまうと、この街に住む全員に同じことを頼まれても引き受けなければなりません。それでは警察官の人数が足りなくなってしまいます」
「で、ですよね……」
ま、期待はしていなかったし。
自分でも無理なお願いだなと感じていたからすぐに引き下がった。