ボディーガードにモノ申す!
ひょこっと姿を見せた足音の主は、くたびれたスーツを着た中年男性だった。
どこからどう見ても「あなたはいい人ですね」と言われそうな、柔和な笑顔。
かなり体格はいいけど、知的なメガネがいい味を出している。
「おや、お客様。どうもどうも。いらっしゃいませ」
その男性はウェルカム感満載で受付に座ったので、私もふたつ並ぶパイプ椅子のうちのひとつに座った。
「新規のお客様かな?法人?個人?」
「個人です」
「そうでしたか。ご自宅にセキュリティシステムを導入なさるとか?それとも防犯グッズなどご覧になります?」
なんだか警備会社って言っても、普通にお店みたいな対応をしてくるんだな。
思っていたのとだいぶ違うので、ちょっと戸惑った。
「警察の方からの紹介でこちらに来ました。…………その、……ボディーガード?みたいなものをやっていると聞いたものですから」
「警察?……あぁ、コタローかな?」
「はい、三上小太郎さんから聞きました」
すぐに三上くんの名前が出てきたので、内心ホッとした。
誰のこと?って言われたりしないかとヒヤヒヤしていたから。彼はこの警備会社に本当に精通しているらしい。
「個人向けのボディーガードを希望なんですね?」
男性の念押しに、私は若干言葉に詰まりながらもモゴモゴ答えた。
「希望はしてるんですけど、料金次第というか……。職場から家までの帰り道が怖いので短時間で構わないのですが、そういうのも可能でしょうか……」
「あ、大丈夫大丈夫。臨機応変だから、ウチ」
本当に話を聞いていたのかと疑いたくなるほど、あっさりとうなずく男性。
微妙に不安なまま、今度は詳しく話を聞きたいからと奥の部屋へ通された。