ボディーガードにモノ申す!
サインを終えた後、西島社長が契約書をコピーしてわざわざ封筒に詰めて渡してくれた。
人の良さそうな笑顔を絶やすことなく、私に握手を求めてきた。
「この度は我が社をお選びいただき、ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
握手しながらチラリと社長の横を見たら、バッチリ真山と目が合った。
彼も微笑んでいる。
あまりにも感じが良いのであの時の男とは違う人なんじゃないかと思い始めた。
そこで、事務所内の電話が鳴った。
失礼しますね、と声をかけつつ社長がいそいそと席を外す。
その丸っこい背中を見送っていたら。
「オヤジ」
と、一言。
「………………え?」
聞き間違いかと思って聞き返したら、目の前に座る真山が組んだ足の上に肘をついて、頬杖をついていた。
その顔は爽やかな笑顔ではなく、以前私を「オヤジ」呼ばわりした時と同じ嫌味ったらしい笑顔だった。
「どうも。初めましてじゃなくて、ニ度めましてってやつ?」
「お、覚えてたんだ……」
「記憶力はいい方なので」
「オヤジじゃないです、オヤジ女子ですっ」
「女子って言うけど、君いくつなの?」
「28ですが」
「それって女子なの?」
「………………女子ですっ!立派な女子っ!」
ふぅん、と目を細める真山。
その見透かしたような目つきが憎たらしい。
イラッとしたので言ってやった。
「担当変更して下さい」