ボディーガードにモノ申す!
契約してからものの5分での変更申請に、真山は呆れたような顔をしてため息をついた。
「そう意地張るなよ。ちゃんと守ってやるから」
「結構です」
「みんなそれぞれ仕事あって無理なんだって。俺しかいないよ、フリーの奴」
「お暇なんですね」
「ちょうど一昨日で担当してた仕事が終わったの」
「とにかく変更して下さい」
「別にいいけど、誰か空くまで待ってたら明日から警護つけられないよ?それでもいいわけ?」
「そ、それは……」
うっ、と言葉に詰まる。
それは困る。非常に困る。
あの怖い思いをもう一度味わうのはたくさんだ。
だからと言ってこいつに守ってもらうのも嫌だ。
「身の危険を感じることでもあったの?個人的に警護つけるなんてさ」
頬杖をついたまま私に尋ねてきた真山は、普通に素朴な疑問という感じで首をかしげていた。
目をそらして答えを濁す。
「女子には色々あるんですよ」
「女子ねぇ……」
「女子!女子女子女子!28は女子!」
「はいはい、分かったよ」
漫才のような掛け合いをしていたら、電話を終えた西島社長がニコニコ顔で戻ってきた。
「おー、気が合ってるようで安心したよ」
「1ミリも合ってません!女性の方の手が空いたら即刻この人とチェンジして下さい!」
掴みかかる勢いで懇願したら、うって変わって困惑顔になった社長が戸惑いを含んだ目で何度かうなずく。
「お願いしますよっ」と私は言い捨てて、ニヤニヤ笑う真山を睨んだのだった。
━━━━━こうして、私と真山武の1ヶ月が始まったのでした。