ボディーガードにモノ申す!
4、 その男、二重人格につき。


翌日、シフトが早番なので早く起きて仕事に向かう準備をする。
今日の夜からお世話になる警護人……要するにボディーガードの真山武と顔を合わせるのは気が重かったけれど、大事なのはそこじゃない。
謎の人物から身を守るために必要なことだと思うことにした。


髪の毛を緩く編み込みしながらひとつにまとめ、下の方でお団子にする。
メイクは仕事用に、わりとガッツリ。
春の日差しは日焼けが怖いので、日焼け止めはしっかり顔と手足に塗っておいた。
伊達メガネをかけて、服とのバランスを見てから靴を決める。
たいていヒールのある靴を選ぶことが多かったはずなのに、また襲われた時のためにと無意識にローヒールのパンプスを選んでしまった。


肩掛けのバッグを持って、玄関のドアを開けた。


早番の時に必ず同じタイミングで出会う、隣人の杉田さんがちょうど部屋のドアに鍵をかけているところだった。
彼は私が出てきたことに気がつくと、温和な笑みを向けてきた。


「おはようございます」

「あ、おはようございます」


会釈して挨拶を返す。
私たちはそのまま駅の方向に向かって歩き出した。


「杉田さんのメガネ、クラシカルでオシャレですよね」


私が話しかけると、杉田さんは少し驚いたような顔をしてからブンブン首を振った。


「オシャレなんて言われたことないですよ。そういう広瀬さんこそ、今日はメガネなんですね」

「これ、伊達なんです」

「あ、そうなんですね。僕はコンタクトが苦手で」

「丸いフレームのメガネが似合う人なんてそうそういませんよ!顔の形とパーツのバランスがいいんでしょうね〜」


彼の横顔を見てみる。
若干地味だけど、案外この人は顔が整ってる部類に入るのよね。
もっと髪型とか服とか、遊び心があれば一気にモテそうな感じはする。


褒められた当の本人は恐縮したように照れている。


「そんなの初めて言われましたよ。たまたま好きなアーティストがこんな感じのメガネをかけていたので、真似してるだけなんですけどね」

「へぇ、そうなんですか……」


うなずきかけて、「えっ」と思わず声を上げた。

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