ボディーガードにモノ申す!
「それってもしかして……、いや、違ってたらごめんなさい。そのアーティストって大谷ドミソ……じゃないですか?」
「そうです、大谷ドミソです」
違うと言われると思っていたのにあっさり認めた杉田さんに、私は目の色を変えて飛びついた。
「えっ!えっ!ホントですか!?大谷ドミソのファンなんですか!?」
「は、はい……。そうです」
「うそーっ!私も大ファンなんですよ!去年の弾き語りライブも1人で行ったくらい大好きで!」
「本当ですか?僕も1人で行きましたよ」
「う、う、嬉しいー!大谷ドミソなんて、知ってる人の方が少ないから誰とも話せなかったんです〜!」
なんたることか!隣人とこんな共通点があるとは!!
朝からすっかりテンションが上がってしまった。
杉田さんも嬉しそうに笑っている。
まさか彼も大谷ドミソのファンだとは!
大谷ドミソとは数年前にメジャーデビューした、いわゆるシンガーソングライターってやつだ。テレビにもほとんど出ないから認知度は低い。
でも時々、CMに曲が使われたりするのでなんとなく聴いたことがあるって人もいるかもしれない。
男性なのだが、大声で感情を込めて歌うというよりは淡々と細々歌う感じで、聴いているとものすごく癒されるのだ。
なによりビジュアルがたまらない。オシャレ感満載で、トレードマークの丸いメガネがよく似合う人なのだ。
「じゃあ、もしも今度ライブがあったら一緒に行きませんか?」
「行きます行きます!」
杉田さんの誘いは自然で、私も大興奮したまま何度もうなずいた。
彼はそんな私を面白そうに見ていた。
「広瀬さんと共通点を見つけられて、嬉しいです」
何気なく言った彼の言葉。
ふわりと聞き流したけれど、ほんのり熱っぽい彼の視線を感じて少しだけドキドキした。
あれ?うぬぼれじゃなければ、なんだかいい感じ?
気のせいかな…………。
隣人と恋に落ちるというのも素敵だわ、とどこか他人のようにうっとりしてしまった。