ボディーガードにモノ申す!
「Aの70か〜。思ってたよりも小さいな」
背後からボソッと聞こえたそのつぶやきに、私は全身の血がブワッとざわめくのを感じた。
ぐるんっと勢いよく振り向くと、そこにいたのはスーツ姿の真山武。
何故ここに!?
「な、な、な、なんでっ」
口をパクパクさせて、何故ここにいるのか問いただしたいのに驚きすぎて言葉が出てこない。
真山は私の言いたいことを勝手に解釈した。
「なんで胸のサイズを知ってるかって?君が下着を買ってる間、後ろにいたからだよ」
「き、聞きたいのはそれじゃない!てゆーか勝手にサイズ見ないでよっ!下着屋までついてこないでよっ!」
「見えたんだもの、仕方ない」
「目をつぶれば済む話でしょ!?」
土日で人も多いファッションビルの中で口論していたのでは目立ってしまう。
私は急いでヤツの腕を引っ張って外に連れ出した。
「どうしてここにいるのよ!?警護は夜のはずよね!?」
怒りなのか恥ずかしさなのか、よく分からない感情をぶつけるようにまくし立てると、彼は肩をすくめて「仕事だよ」と答えた。
「君の警護につくのは夜だけど、初日だし分からないことが多いから下見。君の自宅アパートの場所も確認してきたところ。今から職場に行ってみようと思ってる」
「そ、そういうことならしょうがないけど……。でも背後でこっそり尾行するのはやめて!」
「尾行なんてとんでもない。見かけたからついてきただけ。君って相当鈍感だよね。俺が後ろにいても全然気にしないから驚いた」
「鈍感じゃないです!あなたが気配消してたんでしょうがっ」
息を切らしながら言い返して、ハッと気がつく。
どうしてなのか、こいつと話していると自分のペースが簡単に崩れる。
こんなはずではなかったのに。