ボディーガードにモノ申す!
結局クリスピードーナツを買う間もずっとそばにいたヤツは、私がお店に戻る間にさりげなく購入したらしいドーナツ2つをポイポイと口に放り込み、大満足の顔で歩いていた。
見かけによらず、甘党らしい。
お店に到着した私は、真山を振り返り口のはしにドーナツの欠片をくっつけたままの間抜けな男に
「職場の場所はこれで分かったでしょ?もうあとはどこかに行っててもらえますか。警護は18時半からお願いします」
と抑揚のない言い方で告げた。
彼は私をしばらく観察するように眺める。その目はやけに鋭くて、まるでなんかの映画に出てきそうな狙撃手のような目をしていた。
ペロリと舌を出してドーナツの欠片を絡め取るとニヤリと笑みを浮かべる。
「かしこまりました。では18時半にお迎えに上がります」
「…………今日は土曜日だし、もしかしたら少し残業になるかもしれないけど」
「大丈夫です、お待ちしてますので。約束の時間を過ぎたら延滞料金をいただくだけです」
「……そう。じゃあ」
もっと苛立つ返答が来るかと身構えていたので拍子抜けした。
非常に丁寧な受け答えをした真山は、一礼してお店の前から歩いていってしまった。
あいつの仕事へのスイッチが入るタイミングがイマイチつかめない。
まぁ、1ヶ月だけの警護だし、女性スタッフが空いたら変更してもらうように申請しているし、付き合いは短くて済むだろう。
ヤツの本性を知っているだけに、あまり深く関わりたくはない。
私は橋浦さんに頼まれた食べ物や、ドーナツの袋を持ってお店へ戻った。