ボディーガードにモノ申す!


お店のガラス張りの扉を開けた途端、待ち構えたように橋浦さんと佳織ちゃんが仁王立ちで立っていた。
キラキラと目を輝かせて、2人同時にぐいっと


そんなにのど飴とポテトが食べたかったのか!
そんなにクリスピードーナツを待っていたのか!
慌てて下着屋の袋は背中に隠しておいた。


「も、戻りました〜。お客様、落ち着いたんですね」


店内のディスプレイはいい感じにところどころ乱れており、何組ものお客様が服を手に取って選んだ形跡がうかがえる。
なるべく早めに綺麗にたたみ直せ!という橋浦さんの方針があるので、私は買ってきた袋を橋浦さんと佳織ちゃんに押し付けて、


「お疲れ様です!私、おたたみやるんで2人はバックヤードで食べてきてもいいですよ。混んだらヘルプしますから」


と、気を利かせて言ったつもりだった。
けれど、2人の思惑はそれとは全く違うものだった。
橋浦さんと佳織ちゃんが堰を切ったように同時にしゃべり出す。


「さっきの男にナンパでもされたのか!?」

「さっきの男の人って椿さんの彼ですか!?」


聖徳太子ではない私でも、2人の言わんとしていることがなんとなく読み取れた。
なるほど、先ほどまでお店の前にいた真山の姿を、2人は店内から目撃してしまったらしい。


「えーとですね、ナンパでもなけば彼氏でもありません。知り合いです」


嘘を言ったらまずいので、それなりに事実っぽいことを答えておいた。
しかしその答えでは、佳織ちゃんが納得しない様子だ。


「あれぇ、でもなんかさっきの人……どこかで見たことある気がするんですよねぇ」

「き、気のせいじゃない?」


居酒屋でちょっと揉めた相手だということは、どうか忘れてほしいがために誤魔化す。
彼女も彼女で、記憶が薄れているらしく思い出せないらしい。
悩ましげに眉を寄せている佳織ちゃんの隣で、橋浦さんが感慨深げにアゴヒゲをさすった。


「んん、まぁなんにせよ男と一緒にいるのを見たら、妙に安心した。お前、本当に男っ気ねぇからさ」


余計なお世話です、と心の中でつぶやいた。

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