ボディーガードにモノ申す!


夜道で変な男に襲われただの、胸を触られただの言ったらなんて言われるか分からない。
橋浦さんなんか、絶対にこう言うに決まってる。


「その変質者もお気の毒になぁ。もっとスタイルいい女狙えばよかったのに」


あの有名な日本人メジャーリーガーのような顔で(しつこくてすみません)アハハと笑い飛ばす姿が目に浮かぶ!


佳織ちゃんだってそうだ。
襲われたっていうところまでは心配しながら聞いてくれるだろうけど、それでボディーガードを雇ったなんて聞いた日にはどんな反応するか。


きっと両手で口を覆いながら、
「嘘〜っ!椿さん、無条件で守ってくれる男の人いないんですか!?……あ、そっか!彼氏いないからか!むしろ若くて素敵なボディーガードに守ってもらえて超ラッキーじゃないですか!」
とか明るく言ってきそう。


遠い目をしながら服をたたみつつ、ため息をつく。
激ハマり中のドラマ「御徒町の恋人」。
私がヒロインのエミリだったならどんなに良かっただろう。
ヤマトという恋人がいたならどんなに幸せだろう。
私なんてお金でボディーガードを雇うしかない、寂しい干物女だというのに……。


しかし接客業という仕事についている以上、いつまでもため息などついていられない。
笑顔第一!
心を入れ替えて、乱れた店内を隅々まで綺麗にして次のお客様の来店に備える。


この気持ちを自分の部屋にも持ち込めたなら良かったけれど、それが出来ないのが干物女なのである。
しくしく。









< 51 / 153 >

この作品をシェア

pagetop