ボディーガードにモノ申す!
早番の定刻である18時半。
ちょうど担当していたお客様の接客を終えて、売り上げた商品の補充をストックルームから持ってきたところで、橋浦さんに声をかけられた。
「広瀬、上がっていいぞ」
「あ、はい。ありがとうございます」
手を差し出された橋浦さんに持っていたストックを渡して、遅番で出勤している彼と佳織ちゃんにしっかりと挨拶をする。
「では、お先に失礼致します。また明日よろしくお願いします」
「おぅ、お疲れ」
「お疲れ様でしたぁ〜!」
3人で声をかけ合い、バックヤードで身なりを整えてブルゾンを羽織り、肩掛けのバッグを持って裏口からお店を後にした。
外はまだ少し明るい。
だけど家に着く頃には真っ暗になっていることだろう。
一瞬、襲われた日のことを思い出してブルッと身震いしてしまった。
「広瀬さん。お迎えに上がりました」
ボーッとしていたら突然名前を呼ばれたので、思わずビクッと肩を震わせる。
スラリと背の高いシルエットが見えて、そうだった、と思い出した。決して忘れていたわけじゃなかったけれど。
「真山さん、お待たせしました」
仕事モードの彼に合わせて、私も慎ましやかに仕事モードで話す。
特にそれ以上会話を交わすこともなく、歩き出した。
普通に並んで歩くのかと思いきや、彼は私の半歩後ろをついてくる。
妙に気になって後ろをチラチラ見ていたら、真山はどこの誰なのかと問い詰めたいほどの優しい笑顔を浮かべた。
「どうか俺のことはお気になさらず。いつも通りに動いていただいて構いませんので。コンビニやスーパーに寄っていただいても大丈夫です。あなたの周りに不審人物が来た時には迅速に対応しますから」
「は、はぁ」
なんか、調子狂うんですけど。
もっとおちゃらけた感じで付き添い人ぐらいな感じなのかと思ったのに、案外本格的。
政治家とか大企業の社長さんにくっついてるSPとか警護人もこんな感じなのかしら。