ボディーガードにモノ申す!


可愛らしい清恵が何故この人を選んだのかと聞きたくなるくらいの、なんというか……凄まじい彼氏・富夫くん。
彼はちょっと小太りでずんぐりむっくりしており、どんぐりみたいな髪型をしていて、かつ鼻息も荒い。
パッと見てイケてる要素はゼロに等しい彼なのに、ゾッコンなのは清恵の方だったりする。
彼女いわく、中身がイケメンなんだそうな。


世の中って摩訶不思議。
美女と野獣ってこういうことを言うんだと思わせるほどの組み合わせなのだ。


ていうか、女同士のランチについてくるなよ、富夫。
清恵と2人で気兼ねなく語れると思っていたのに、そうもいかなくて若干のイライラを隠せない私。


ペンネアラビアータをパクパク食べていたら、清恵が本題を思い出したらしく顔を上げた。


「あ、ごめん椿。話の途中だったよね。…………えーと、それで?仕事帰りに変態に襲われて、ボディーガードを雇ったんだっけね」

「うん、そう」


私はうなずいて、はぁ、とため息をついた。
真山のことを考えると気が重くなる。


知らない男に襲われた話も、ボディーガードを雇ったことも、他人に話したのは今日が初めてだった。
親友の彼女には全部話して、愚痴りたい気分だったからだ。


「そのボディーガードが最悪なのよ!仕事してる時は顔つきも話し方も態度も文句ナシ。紳士的だし守ってくれてるって感じはするんだけど。あいつ完全に二重人格でさ!部屋の前まで送った途端、急に態度がデカくなって、私に弱い女の振りするな、みたいなこと言ってきたりしてさ〜!腹立つのよ、ほんと!」


ここ1週間の恨みつらみが溜まっていて、ちょっとやそっとじゃ怒りが収まってくれそうにない。
思い出しただけでもムカついて、地団駄を踏んでしまった。

< 60 / 153 >

この作品をシェア

pagetop