ボディーガードにモノ申す!
「そんな最悪な男なら、違う警備会社に浮気しちゃえば?」
こともなげに発言してくる清恵に、「私だってそうしたいわよ!」とわめき散らした。
「でももう1ヶ月分の基本料金は払っちゃってるし。契約期間中に解約すると違約金追加になっちゃうし。警察の人からオススメされたからそこにしたのにさ〜。踏んだり蹴ったりだわ」
「そっかぁ。じゃあ1ヶ月は我慢しないといけないわけだ」
「一応、担当変更は申請してるんだ。女性の手が空いたら、チェンジしてくれることにはなってるけど……」
頬杖をついて、ガラス張りの明るい店内を見回す。
お店にいるお客さんの半分はカップル。
みんな楽しそうに笑いながら食事している。
憂うつな気分になりつつある私に、富夫くんが話しかけてきた。
「でも、個人でボディーガード頼むのってけっこうお金かかるんじゃないの?」
「短時間だから、それほどじゃないんだ。しばらく彼氏もいなかったから、貯金だけはそれなりにあるのよね……。ま、確かにかなりイタイ出費なんだけどさ」
三上くんのおかげで、料金は半額だし。
その点は彼に感謝だけど、担当が真山っていうのだけが引っかかる。
「ねぇ、椿」
いつになく神妙な面持ちで、清恵が私の顔をのぞき込んできた。
「ん、なに?」
「そんな出費なんかしなくても、タダで、しかも無条件で守ってもらえる方法、あるわよ」
「うそ!どんな方法!?」
思わず飛びつくと、彼女はニヤリと笑みを浮かべて
「カレシ、作ればいいのよ」
と答えた。
期待して損した!
ガッカリした私は、嫌がらせのようにテーブルの上で指を絡ませたり、目を合わせて微笑み合う清恵と富夫くんを睨んだ。
「そんなん出来てたらとっくにやってるよ……。出来ないからお金払ってボディーガード雇ったんじゃない」